本書は、特定の楽器のための“演奏テクニック論”ではなく、特定の作品の“楽曲分析”でもない。楽譜をどのように読み、そこからどう音を組み立てて演奏していくのか、そのために必要な知識・練習計画・感情や表現を、どのように認識し、学習し、発展させるのか、を精神論にとどまらず、具体的に説いた本である。著者は、チェリストで教育者でもあるゲルハルト・マンテル。音楽の演奏と自然の原理を絡めている点も本書の魅力の一つと言える。例:「私たちの知覚は、変化しないものは信じられないくらいの速さで消えてゆく(蛍光灯の唸り音が徐々に聞こえなくなっていくように)…このことは音どうしの関係についてもあてはまる…/すべての生命現象は直線的ではなく曲線的に変化するので、生命現象のひとつである音楽も均質で均一であることは稀である…。」チェロに限らず楽器を演奏するすべての人に、深い感動と発見を呼び起こす一冊である。
[目次]
はじめに
日本語版によせて
1. 演奏に必要なのは直観か頭脳か?
2. 楽譜を読むとは?
3. パラメーターを聴こう
4. リズム
5. 強弱法
6. アーティキュレーション
7. 音色
8. テンポ
9. 自分らしさをどこまで出していいの?
10.しくみを知って演奏しよう
11.特徴をつけて演奏しよう
12.変化をつけて演奏しよう
13.ズレのある演奏をしよう
14.演奏につながりを持たせよう
15.音楽をイメージしてみよう
16.表現とコミュニケーション
17.自分らしい演奏を求めて
スポンサーサイト
Comment